(Book) 中村屋のボーズ
少し前に読み、関連書籍を読んだ後、もう一度読み直した「中村屋のボーズ〜インド独立運動と近代日本のアジア主義 」。
内容(「BOOK」データベースより)
R.B.ボース。1915年、日本に亡命したインド独立の闘士。新宿・中村屋にその身を隠し、アジア主義のオピニオン・リーダーとして、極東の地からインドの独立を画策・指導する。アジア解放への熱い希求と日本帝国主義への止むなき依拠との狭間で引き裂かれた、懊悩の生涯。「大東亜」戦争とは何だったのか?ナショナリズムの功罪とは何か?を描く、渾身の力作。
幼なじみの友人から紹介された本ですが、最初、ボーズと聞いて、ネタジー・チャンドラ・ボースかな?と思いました。
R.B.ボーズについては、この本を読むまで、全く知りませんでした。
新宿の中村屋のインドカリーは有名で、わざわざ食べに行った事があったのに、その誕生の背景も知らないとは... なんて無知な私。
太平洋戦争のことは、それなりに本も読んでいて、なんとなく知っていた「つもり」だったんですが、まだまだ知らないことが多すぎるのと、自分が読んでいた本はものすごく偏りがあったと思い知りました。
先日、松本健一さんのオフィスに遊びに伺ったときにも、歴史をもっと学ぶことを教えていただきましたが(そしてこれを読んだ方がいいという本一覧も!)、いくら勉強しても追いつかない...
しばらく、歴史強化月間続きそうです。
さて、本書の感想です。
ボーズの人生を振り返りながら、当時の日本の帝国主義やアジア主義の実態をあぶり出しています。日露戦争後の日本がアジアの民族主義者のネットワーク拠点になっていたことは、いろいろな文献から知っていたのですが、この本で一番興味深かったのは、反帝国主義としての役割を日本に求めていたボーズをはじめとするアジア主義者達が、日本の朝鮮の植民地化、そして、中国への侵略のプロセスをどのように見ていたのかが丁寧に描かれているところだと思います。西洋の視点ではなく、日本の視点ではなく、アジアの視点で歴史を読むことで、第二次世界大戦における日本の位置づけがもっとクリアになりました。
また、インドの英国からの独立という点にあまりにも重点をおきすぎたボーズもまた、帝国主義路線へ
妥協せざるを得なく、現実的解を探す中、祖国インド人からの反発にあい、志半ばで病に倒れ、インド独立を見ぬまま帰らぬ人となりました。その壮絶な人生と、苦悩に満ちた人生には、心打たれるものがあります。中村屋のインドカリーにそんな歴史と想いが隠されていたと知った今、もう一度食べるときにはもっと複雑な味を感じることができるのではないかと思います。
学術書ですが、歴史小説としても面白く読める本だと思います。特に、中村屋に駆け込み、かくまわれるところなどは、歴史を全く知らなくても、ひき込まれる書き方になっており、インドカリーや中村屋の娘との結婚や死別のところなど、ドキュメンタリー映画を見ているようにも思いました。
知識がなくても読み進めますが、複雑な人間関係などは、分かっていればもっと楽しめる本なので、私は参考文献をあたり、再度読み直したところ、もっと深く読めたような気がします。
日本の経済力が低下している今、日本はどのようにアジアの中で、そして世界の中で、そのポジションを確立し、日本という国の存在を見いだすのか。この本に描かれているボースが理想とした「帝国主義を超克した東洋」を日本はもう一度引っ張って行くことができるのか? そう自問する日々です。
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