(Work) アンジェリーナ・ジョリーさんはなぜ手術を受けたのか?(HGPI朝食会)
HGPIの朝食会は、「アンジェリーナ・ジョリーさんはなぜ手術を受けたのか~遺伝学駅検査と遺伝カウンセリングの現状と課題について考える~」でした。
スピーカーは、日本で唯一の米国と日本の認定遺伝子カウンセラーの資格を持つ田村智英子先生。
この領域での仕事をしているので、相談がいろいろと多い内容でしたので、田村先生のご意見を伺う機会があり、とても勉強になりました。
意外だったのは、遺伝子カウンセラーの低所得ぶり。日本に現在139人いるそうですが、月収は20万以下で、田村先生クラスでも、時給が現在1200円とのこと。こんなに処遇が悪ければいい人材が集まらない、質の低下が問題となっているとおっしゃっており、そして、インターネットの普及で、カウンセラーが必要かどうかも、本当は議論すべきとおっしゃっていたことでした。
自分と異なる選択をする人に対し、「なるほど、私とはまったく違う考え方だけれど、そんな考え方をする人もいるのだな」と受け入れる、社会の多様性が前提に必要だとおっしゃる点は、とても理解できました。
また、今回のアンジェリーナ・ジョリーさんの報道については、マスコミの報道に不適切な部分があったという点は、合意します。例えば、がんになるリスクを87%と表現されていましたが、最大87%であって、これは確実な数字ではなく、幅がある数字だということは、あまり報道されていませんでした。(どこかのサイトで、幅で表記していた方がいらっしゃったので、必ずしもすべてのメディアが間違っているというわけではないでしょう)
また、予防的手術の中では、私のように医療関係で仕事をしていれば、リスク低減卵巣卵管切除は、欧米では推奨されているが、リスク低減乳房切除術は、検診でもいいと言われていて、推奨されているわけではないと言うのは知っているかもしれません。が、私が相談を受けた多くの方は、そのことを知らなかったので、こういう情報はきちんと提示されるべきだと、私も思っています。
持論ですが、生命倫理の議論は、その国で非合法的でなければ、どんな答えを出しても、その人がよく考え、納得して出した結論であれば、正しい答えだと思います。
非合法的でなければとあえて書くのは、合法的でないやり方は、いくら本人が正しいと思っても、私はそのラインは犯すべきではないと考えているからです。ここも、議論の余地は十分にあるでしょう。憲法の解釈の点も、日本は特に、人工中絶の点では、議論がもっと必要かもしれません。
今回のアンジェリーナ・ジョリーさんの件は、多くの人に、こういう決断があるのだということを知らしめ、そして、考えさせることになったので、私は彼女が発表したことには、とても大きな意味があると思います。しかし、乳がんリスクの高い人がすべて切除すべきだとは思いませんし、いろいろな選択肢の中の1つの方法として、捉えてもらう必要があり、そして、それをきちんと伝えていくことが大切だと、改めて、思いました。
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