キャリア相談: 学歴が無ければ就職できないのか?
Q
秋山さんは、たいした大学も出ていないのに、なんでボストン・コンサルティングに潜り込めんたんですか? 学歴が無い人は、どうしたらいいんですか?
(20代、男性)
A
このお悩み相談を頂いてから、しばらくの間熟成させていました。
即レスしたら切れちゃいそうだったので(笑)。
このキャリア相談をアップするかどうか、いろいろと考えたのですが、アップする理由は、次の2点です。1)いくら匿名だからと言って、誰かに質問するのに、このような質問の仕方は大人気ないと思う 2)学歴差別について悩んでいる学生(?かどうかは分かりません、職業が書かれていないので)がいるとすると、その対策に、何かヒントは出せると思う。
まず最初の点について。
就職したいと本気で願っているのあれば、匿名であれ、人に何か聞くときには、聞き方を工夫したほうがいいでしょう。このようなことを、心の中で思っていても、言動にしてしまっては、うまく行くものもいかなくなるのではないでしょうか。
さて、本題。
私は有名大学を出ていないので、確かに、経歴を見ると、「なぜこの学歴で、この会社に入れたの?」と思われる方も少なからずいると思います。そんな私だから、お答えできることもあるかもしれないと思い、まじめに回答を考えてみました。
学歴差別はある
企業はものすごい数の新卒からの応募があるのですから、何等かの方法で、足切をしなくてはいけません。その1つの基準が「学歴」でしょう。偏差値で切るというのは、1つの物差しです。
また、新卒でなく、中途採用でも、応募数はかなりある場合があります。私自身、1000人以上の採用に自分自身が直接関わってきたことを振り返ってみると、書類応募の段階で、1名の枠に対して100名を超える応募があるというケースは何度もあり、数秒で応募書類を判断する1つの基準に、「出身校」や「出身企業」というのがありました。いい大学を出ていれば、その学校に入るための、「お勉強」を効率よくやってきたと想定できるからです。そういう意味で、学歴差別はあります。
私自身は、学歴差別を受けたことがあるかと言われれば、「ある」と答えます。複数の企業から「そうは言っても東大早稲田慶應ではないので、うちの会社に入るのは無理です」と言われたことは、何度もあります。しかし、そういう企業に入りたいかと言われると、興味ないので、「学歴差別は受けたかもしれないけれど、個人的に大したことだとは思っていない」です。
就活する上で、「学歴差別はある」と思って、就活したほうがいいのは間違いないでしょう。
学歴差別を乗り越える方法はある
しかし、「学歴不問」なケースは本当にたくさん存在します。
私が今まで勤めてきた企業は、学歴不問のケースだと思います。だから、質問者の言うように、有名大学を出ていない私が採用されたわけですが。
面接で学歴の話なんて出たことがありませんでしたので、今まで勤めた企業で「学歴差別された」と思ったことはほとんどないです。入社後、「どうやって入ったの?」と同僚き聞かれたことはあるので、「ほとんど」をつけています。採用側はそんなこと考えていなかったと思っています。
私自身も、学歴不問で採用した人は数多くいます。それが大半だったか?と聞かれると、半分は超えていないかもしれないけれど、3-4割は学歴はまったく気にせず採用しました。半数は学歴を見たと答えるのは、その人がどんな人か履歴書からだけでははっきり分からないため、最低限の足切の基準として学歴を採用基準の1つとして使ったからです。
では、いったい何を見て採用しているのか?
それは、その人がどのように生きてきて、どのように仕事(新卒の場合ですと、勉強やスポーツ)してきたかという点につきます。
筆記試験の点数が高い人と仕事をしたいのではなく、「この人と一緒に仕事をしたい!」と思わせる魅力の部分で決めていることが、実際のところ多いのです。魅力の中には、その人の「キャラ」かもしれませんし、その人の「仕事で出してきた実績」が含まれるかもしれません。それは時と場合によります。
20代の頃に、採用してくださった方に、「なぜ私を採用したのですか?」と聞いたことがあるのですが、その方から、「秋山と雪山で遭難しても、楽しくやっていけるだろうなぁって思ったから。」という答えが返ってきて、「え!?そんな基準!?」と思ったことがありました。
でも、実際に自分が採用する側になって、部下から、「なんで私を採用したのですか?」と聞かれた時に、昔の上司と同じ答えをしたいるなぁと気付いたことが何度かありました。
「ドロドロのターンアラウンドを24時間365日一緒にやっても、なんか楽しく仕事できるなって思ったから。実際に一緒に仕事できて、とっても楽しいよ。」
こう私は答えていたのです。
一緒に働きたいとどうやって思わせるか?
企業、上司、チーム、ポジションによって、求められている「魅力(=スキルなど)」が異なります。それを冷静に洗い出し、その上で、自分が当てはまるものをプレゼンすることだと思います。
以前、ご相談があった学生さんも、就活の面接でうまくいかず、「私なんてできることは何もない……」と悩んでいました。その子に、「いつも癒し系で、私がヘロヘロになっても、元気になるように一生懸命してくれるところが、魅力だよね?」と言ったら、「そんなのスキルになるんですか!?」と驚いていました。
彼女がいなければ、私は仕事にならないと言っても過言ではない程、彼女は大事なアルバイト社員でした。それは、彼女が瞬時に人を癒す言葉をかける能力が高く、彼女がいることで会社の雰囲気ががらっと変わること、そのスキルを使って、クライアントからの電話で相手が困っていることを引き出すことなど、私が面接で「この人と働きた い!」と思ったことを発揮してくれていたからでした(もちろん、職務上求められていた事務処理能力は平均以上でした)。それを全面に出して就活したらいいと伝えたところ、その後しばらくして、内定をもらい、卒業と同時に、私のところを辞めていきました。
新卒に求められていることは、とびぬけたスキルではなく(そういうケースもあるかもしれませんが)、社会人として伸びていく「のびしろ」「可能性」です。極論言うと、 それ以外は、何も求められていないのではないかと思います。やる気だったり、人を癒す力だったり、突拍子もないことを言い出す違った視点だったり……。それぞれの職場で求められている「目に見えにくいもの」が求められているのではないでしょうか。それを理解して、自分の魅力をプレゼンすればいいのです。
有名企業ばかり狙っていないか? 自分も逆差別をしていないか考えよう
新卒や若手の方によく見られるのですが、有名企業ばかり受けていませんか?
世の中には、B2B(企業間取引)や中小企業で一般の人に知られていない優良企業がたくさんあります。
自分が会社の名前を聞いたことが無いからと言って、その会社が悪いとどうやって判断できるのでしょうか?
B2B企業や中小企業の中には、ものすごく優良企業だけれども、一般消費者に知られていないため、求人で苦労している企業もあります。そのような会社は、学歴で人を判断せずに採用する傾向があります。
自分も相手を「名前」で判断していないか?
そう考えれば、おのずと、もっと幅広く、いろいろな企業を探してみようと動き出せるのではないでしょうか。そうすることで、就職先が見つかるケースも増えるのではないでしょうか。
どうしても学歴が欲しいなら学歴ロンダリングをすればいい
それでもどうしても学歴が必要だと後悔しているのであれば、少子化の時代ですから、学歴ロンダリングはそれほど難しいことではありません。
私も一時期、部長職としてはふさわしい学歴ではないと言われて、会社から学歴ロンダリングを勧められたことがあり、いろいろと悩んだ末、博士課程に進学したことがあります。(詳しくは、著書「考えながら走る」をご参照ください)
最終学歴を書きかえたいと強く願うのであれば、著名大学の大学院へ進学する方法はいくらでもあります。少子化で生徒を集めるのにやっきになっている大学はいくらでもありますので、修士や博士ではなく、学部の3年に編入するという方法もあります。
学歴差別はあるかもしれません。けれど、学歴だけで世の中すべて判断されるわけではありません。自分が、就職できない言い訳を「学歴」に見出していないか、今一度、考えてみてはどうでしょうか。
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