検証力を鍛える
いくらいい企画や提案を出しても、その内容が検証されていなければ、「ただのアイディア」どまり。たとえば、新商品を思いつき上司に提案したけれども、「なんでそれがいいの?」「それでいくら儲かるの?」と言われて、「1億円くらいでしょうか」と答えても、それをサポートするモノがなければ納得してもらえません。
まず、この「なんでそれがいいの?」に対する答えは、自分のアイディアを検証した結果を出せばいいのです。検証する方法はいくつかありますが、私がよく使うのは、実験による検証、分析による検証、ディスカツション(社内、顧客、消費者を含む)による検証、事例による検証の4つです。
実験による検証を説明するのにぴったりな事例が、セブンーイレブンの「おにぎり」です。非常に有名な事例なのでご存じの方も多いかもしれませんが、7~8年前、セブンーイレブンのおにぎりの売上が伸び悩んだ時期がありました。セブンーイレブンは「消費者はセブンーイレブンのおにぎりに飽きている」という仮説を立て、「今の消費者が求めているのは高品質でおいしいおにぎりだ!」という結論に達しました。
この高品質のおにぎりを出すとなると200円くらいの価格になってしまいます。当時は、スーパーなどの小売店は値下げすることで売上を伸ばしてきており、セブンーイレブンの200円おにぎり(当時のおにぎりは約100円くらいでした)は常識外れだ、絶対に成功しないと言われたのですが、セブンーイレブンは店頭で実験をしてなることにしたのです。まず赤字覚悟で100円でおにぎりを売ってみました。すると売上が20%ほど伸びたそうです。次に価格を200円に値上げして売ってみました。なんと100円で売ったとき以上の売上になったそうです。
この実験結果から、セブンーイレブンは、「消費者は高くても高品質でおいしいおにぎりを求めている」という仮説を検証できたのです。
2番目の手法が、分析による検証です。分析にはデータを使った定量分析とインタビューやコメントなどを使った定性分析の2 つがあります。データを使って自分が考えていることが正しいことを証明していくのが定量分析です。定性分析は、データには表れないメンタルな部分をインタビューやコメントから分析する方法です。
3番目の手法が、ディスカッションによる検証です。ここでわざわざ社内、顧客、消費者を含むと書いているのは、ディスカッションをする相手は多ければ多いほどよいからです。ディスカッションによる検証では、自分が持っているアイディアや仮説をぶつけてみて、相手の反応を見ることで自分が考えていることがいいか悪いかを判断します。たとえば新商品のアイディアがあり、上司があまりいいと思っていなくても、消費者が「すごくいい!いくらなら買います」と言えば、説得力があります。
最後の手法が事例による分析です。事例を使って、こんな成功(失敗)事例があります。ゆえに自分が提唱していることは正しいのです、という分析方法です。この「思考力エクササイズ」の中でも、クラフト社の例やセブンーイレブンの例など様々なケースが出てきますが、これはすべて事例による分析です。
分析方法を簡単にご紹介してきましたが、実験による分析や顧客や消費者とのディスカッションによる分析は、時間もかかりますが、お金もかかります。そこで、私が提案書や企
画書を最初に出すタイミングで使うのは、分析・社内ディスカッション・事例の3つの検証方法です。提案書・企画書が通った段階で、実験による分析や顧客・消費者とのディスカッションによる分析などの手法を使って、さらに精度を高めていくようにしています。
また、これらの手法を使って自分のアイディアや仮説を検証した後は必ず「売上試算」を出し、自分の提案や企画がどのくらいビジネスとしてインパクトがあるのかを提示します。それは、ビジネスの世界では、最後は儲かるかどうかがポイントになるからです。数字に対する感度が高ければ高いほど、提案・企画は通りやすくなります。今日から、「検証力を鍛える」について、定量分析と売上試算の2つに焦点をあててご紹介します。
検証力を鍛えるでご紹介予定の内容は次のとおりです。
- 数字を見せて検証しよう
- 定量分析1: 数値比較
- 定量分析2: 時系列による比較
- 売上試算(1)基本的な数字を覚える
- 売上試算(2)Aという車の売上高を試算しよう
- 売上試算(3)レストランの売上予測
- 売上試算(4)ネイルサロンの売上予測
- リアリティチェックを必ずしよう
- もっと勉強したい人のための参考書リスト
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