思考力Exercise11: 逆転の発想法
イエール大学のビジネススクールで使われている有名な発想法の中に、「対称性」と呼ばれる方法があるのですが、これは、現在の解決策を逆転して考えるというものです。
これをベースに私なりにアレンジしたのが、この逆転の発想法。
今ここにあるものは「常識」としてとらえられていますが、見るもの聞くものすべてに対して天の邪鬼になって「もしもこうじゃなかったら?」と考えてみるのです。そしてそれを解決する方法を考えることで、新しいアイディアを出していきます。
消臭剤「ファブリーズ」の大ブレークで、あせった競合メーカーから、「ファブリーズのように家庭用品で新しいマーケットを作り、わが社も成長しなければならないので、何か考えてほしい」という依頼を受けたときに使ったのがこの手法です。
まず家事の常識や理想をリストアップしていきました。書きながら、いくら仕事しているからって、家事ってここまでやって家事って言えるんだよなぁと自己嫌悪に陥るあまり楽しい作業ではありませんでしたが……。
そして、すべてそれを否定形に変え、それを実現する方法を考えたのです。採用された実例をあげるとどこの企業か特定されてしまうので、ここはボツになったアイディアを例としてあげます。
最低でも週1〜2回ははたきをかけないと本棚の本にはこりがたまる。→本棚にはまったくはたきをかけなくてもいい→スプレー式ではこりをはじく本や本棚のコーティング剤
はたきをかけるのがゼロにはならないかもしれませんが、はこりをはじく本のコーティング剤があれば、月1回とか3カ月に1回くらいにはたき作業を減らせるというのが狙いです。
最初は自己嫌悪になるなぁと思いながら常識や理想をリストアップしていきましたが、最終的にはその常識や理想を否定しながら家事の手抜き方法を考えるわけなので、とても楽しいプロジェクトでした(笑)。
この逆転の発想を応用した有名な事例が富士フィルムの「写ルンです」(フィルム一体型カメ一乙。今はデジカメが主流になっていて、フィルムマーケットは縮小傾向にありますが、デジカメが普及する前は「写ルンです」が爆発的に売れました。
たまたまボストンコンサルティンググループで一緒だった同僚が、前職でこの開発プロジェクトにいたそうなのですが、その人と一緒に仕事をしてみると、面白い視点で仕事をするなぁと思いました。そこでこの人がやっていた「写ルンです」についていろいろと調べてみたところ、この逆転の発想を使って生み出した商品だということがわかり、彼もそういう思考を持って仕事に取り組んでいたことがわかったのでした。
常識だと、カメラにはフィルムを装着して使うものですが、フィルムメーカーの富士フィルムは、その反対に、フィルムに最小限のカメラ機能を搭載できないか?と考えたのです。そして開発したのが「写ルンです」。
ネーミングもユニークで、はじめてこれを見た役員の方が「これで本当に写るのか?」と聞いたところ開発メンバーが「写るんです」と答えたからだとか。
この考え方は物事の発想をするときにも使えますが、人の意見、たとえば新聞や雑誌などのマスコミの意見を聞いた時にも「これって本当なんだろうか?」と考えてみることで、見えていなかった物事が見えてくるようになります。「あれ、おかしいな?」と思ったことをノートに書きとめておくだけでも、物事を違う側面から見るエクササイズになりますので、ぜひやってみてください。
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