ジョン・スチュアート・ミルの言葉
“Whoever supposes that this preference takes place at a sacrifice of happiness-that the superior being, in anything like equal circumstances, is not happier than the inferior-confounds the two very different ideas, of happiness, and content. It is indisputable that the being whose capacities of enjoyment are low, has the greatest chance of having them fully satisfied; and a highly-endowed being will always feel that any happiness which he can look for, as the world is constituted, is imperfect. But he can learn to bear its imperfections, if they are at all bearable; and they will not make him envy the being who is indeed unconscious of the imperfections, but only because he feels not at all the good which those imperfections qualify. It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied. And if the fool, or the pig, is of a different opinion, it is because they only know their own side of the question. The other party to the comparison knows both sides.” – John Stuart Mill, Utilitarianism
すなわち、同じような環境のもとでは優れた存在は劣った存在よりも幸福でないと考えている人は、幸福と満足という二つの非常に異なった観念を混同している。快楽を享受する能力の低い人はそれを十分に満足させる見込みが大いにあるが、高い能力に恵まれた人は、自分の求めることのできる幸福は今あるがままの世界においては不十分なものであるといつも感じていることは疑う余地のないことであろう。しかし、このような人はこの不完全さが何とか耐えうるものであるならばそれに耐えることができるようになる。また、その不完全を伴うのにふさわしい善をまったく感じることができなくなるいう理由によってだけでも、不完全さをまったく意識することのない人のことを羨んだりするようにはならないだろう。満足した豚よりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい。愚か者や豚がこれと異なった考えをもっているとしたら、それは愚か者や豚がこの論点に関して自分たちの側のことしか知らないからである。比較されている相手方は両方の側を知っている。- ジョン・スチュアート・ミル 「近代社会思想コレクション5 功利主義論」
ハフィントンポストに『東大卒業式の式辞が深いと話題に「善意のコピペや無自覚なリツイートは……」』という記事が掲載され、私の周囲でも大変話題になりました。
そこで、ミルの「功利主義論集 」を読んだのははるか遠い昔だったと思いだし、「いったいどんなことが書かれてたんだっけ?」と内容もうろ覚えだったので、いい機会なので、読んでみようと読み直してみました。
その昔読んだ時は、最初は英語で読んで、その後先輩から1967年に出版された「世界の名著第38」を読み、「いいこと書いてあったけど、あぁ、読みにくい」と思ったことは覚えていたのですが、今回は、2010年に出版された「功利主義論集 (近代社会思想コレクション05)」を読んだので、訳が新しいからなのか、それとも私が大人になったからなのか、「以前よりも読みやすい!」と思いました。今から挑戦される方には2010年版をおススメします。
最近、私は政治哲学に偏り過ぎていたようで、ミルの道徳哲学を語るこの本に、想像以上にどっぷりとハマり、なんと読むのに1週間近くも時間をかけてしまいました。さくっと読める本ではないので、読む前に覚悟は必要かも!?
今、この本を読むといいなと思ったのは、グローバルにこれだけいろいろな出来事が起きている時代に、正義と功利主義の衝突についてミルの考察がかかれていて、「正義とはなんだ?」と考えさせられる点です。古典の部類に入るのだと思いますが、2015年の現在においても、非常にはっとさせられる内容で、極めて現代的だと感じました。
東大の式辞でも使われた文章の後に「比較されている相手方は両方の側を知っている。」と続いているのは、是非知ってもらいたいなと思い、前後の文章もあわせて掲載しました。
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ちなみに、私が読んだ英語版はこちらです。理由は、ペーパーバックの方が安いから。
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