セ・シ・ボン
先日、友人の勝間和代さんが王様のブランチに特集されたときに、ランキングに入っていて初めて知った平 安寿子さんの「セ・シ・ボン(C’est si bon)」 が届き、早速読みました。
生き迷っていた若いタイコが、留学先のパリで出会った、風変わりな人物、おかしな出来事。笑って、あきれて、やがてしみじみとする、調子っぱずれの留学物語。
1979年の留学記をなぜ今になって出版するのだろう?と、思いながら読んだのですが、想像以上にいい本でした。
例えば、以下の下り。
小さい欠点しかない男には、小さい長所しかない。大きな欠点のある男には、大きな長所がある。そして、男の大きな欠点が許せない女もまた、小さな長所しかない甲斐性なしなのである。(「大きな欠点のある男」より)
うーむ、するどい観察力だ。
神様は何かを奪うとき、必ず、別の何かと等価交換してくれる。そういうことも、過去を俯瞰すれば見えてくる。
写真は、二度と戻ってこない時を刻印している。その時間は失われているが、確かにあったことを証明してくれている。
生きていくのは、しんどい。たまさか幸せを感じても、満ち足りた気分は一瞬で消える。自分がどんなに恵まれていたかわかるのは、その時が過ぎ去ってからだ。(「あとがき」より)
執筆を生業としている方だけあって、ものすごくいい表現をしていて、なるほど〜と思えるところがたくさんあります。
パリの留学記がすばらしいというわけではなく、30年近い時を経たからこそ紡ぎだせる言葉があるのだと教えてくれた本です。
(総合評価:★★★☆☆ ブランチを見てなかったら手に取ってなかったと思う本。彼女の小説を読んでみようと思いました)
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