ピアニストという蛮族がいる
東急ジルベスターコンサートで中村紘子さんが弾いたので、中村紘子さんつながりで「ピアニストという蛮族がいる」を読みました。
内容(「BOOK」データベースより)
西欧ピアニズム輸入に苦闘した幸田延と弟子の久野久。師は失意の晩年を送り、弟子は念願の渡欧中に自殺をとげた。先人ふたりの悲劇を描いた6篇と、ホロヴィッツ、ラフマニノフほかピアノ界の巨匠たちの、全てが極端でどこか可笑しく、しかも感動的な“天才ぶり”を軽妙に綴った8篇。『文芸春秋読者賞』受賞の傑作。
彼女の音楽も素晴らしいが、エスプリの効いた文章で、あまり知られていない(私が知らないだけかも知れない...)ピアニスト、純粋日本培養の久野久やオーストラリアの大自然で幼少を過ごし、突然ピアノに目覚めたアイリーン・ジョイスなどの生涯を丁寧に描きだした点も素晴らしいです。もちろん。ホロヴィッツ、ラフマニノフ、トスカニーニ、ルービンシュタイン、バッハ一族などの奇行も面白いのですが。私が感動したので、久野久の生涯。西洋音楽の導入時期に、苦しみながら日本でピアニストとしての地位を確立したけれど、初のヨーロッパで自分の能力に失望し自殺してしまう久野久。外に出なければずっと日本でベートーベン弾きの第一人者として生きていけただろうに、しかし、周囲の期待に応えるべく、外へ出てしまったのが不幸の始まり。NOといえない状況だったのは理解できるけれども、NOといえる強さがあれば...と、心から思いました。そして、こういう方々がいらしたからこそ、今の日本におけるクラシックがあるのだと、感謝しています。
以前、アルゲリッチと飛行機で隣り合わせになったことがあるのですが、彼女の奇行はすざましいと当時思ったのですが、この本を読むと、「もしかしてフツー(!?)なのかも〜」と思ってしまえる程、この本を楽しむことができました。
P.290〜P.292にある「手弱娘のいないわけ」のところは、一番ぐっときました。女性ピアニストというのは...のくだりは、別にピアニストでなくても、クラシックの音楽家に共通することではないかなぁ〜と思います。
…女性ピアニストというのは、づしても性格的には勝ち気で負けん気で強情でしぶとくて、神経質で極めて自己中心的で気位が高く恐ろしく攻撃的かつディフェンシヴで…(中略)ゆめゆめピアニストなんぞを女房にするものではない。
これってもしかして私も貰い手が無いってこと!?
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。