思考力Excercise 16: プロ野球型か、サッカー型か?

絵: かたぎりもとこ

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だいぶ前の出来事ですが、地下鉄に乗っていると、前の座席に座っているおじさんがガバッとスポーツ新聞を広げました。「この混んでる電車でデカデカとスポーツ新聞広げるなよ〜」とちょっとイライラしながらも、「清原、なんとか」とか、「新庄、なんとか」とか、「千葉ロッテがどう」とかといった見出しを読み始めました。すると、ふとある疑間が湧きあがってきました。

 

「プロ野球の記事の見出しって、『清原』とか『新庄』とか選手個人の名前が載っているものが多い。でも千葉ロッテの記事だけは『千葉ロッテ』が見出しになっている。これっていったいどういうことなんだろう?」

 

気になった私は、下車した駅で売っていたスポーツ新聞全種類を買って、一通り目を通してみました。やはり古田とか清原とか、選手の個人名が見出しになっているものが多いのですが、なぜか千葉ロッテだけは「千葉ロッテ」として扱われています。ただしバレンタイン監督が登場するときだけは、記事の見出しも「バレンタイン監督、なんとか」となっていることが多いようです。

 

私はすごく千葉ロッテのことが気になりだして、千葉ロッテに関連する記事をたくさん集めてみたところ、「千葉ロッテのビジネスモデルと、ほかのプロ野球チームのビジネスモデルは、どうも違うらしい」と気づいたのです。

 

(注:このお話を書いたのは2007年ごろのことで、今からだいぶ前のことです。2015年時点でこのビジネスモデルの最新状況について、検証しておりません。あくまでも考え方としてご利用ください。)

 

 

絵: かたぎりもとこ

絵: かたぎりもとこ

プロ野球のビジネスモデルは、選手個人のキャラクターに負うことでなりたっている部分が大きく、昔の王。長嶋はその典型で、みんな王や長嶋のプレーが見たくて球場に足を運んでいました。今も巨人のビジネスモデルは、昔ながらのそのスタイルを踏襲しているように見えます。スター選手をどんどん獲得することで、ファンを増やそうという戦略です。

 

ところが千葉ロッテは、もともとスター選手がいなかったせいなのかもしれないのですが、そういう戦略は採らず、イベントなどのファンサービスを充実させることで、人々の関心をロッテに向けさせます。そして球場では、ある特定のスター選手ではなく、ロッテというチーム全体を応援してもらうスタイルをとっています。

 

だからスポーツ新聞の見出しも、千葉ロッテの記事は「千葉ロッテ」ですが、ほかの記事は「清原なんとか」「新庄なんとか」となるのです。

 

巨人のようなチームにとって、スター選手の不在は営業に大きく響きます。けれどもロッテのファンは、「球場で、みんなでチームを応援する」という場と雰囲気を楽しみたくて試合を観戦しに来るわけだから、スター選手がいなくても一定の人気を維持することができるのです。

 

では、従来のプロ野球のビジネスモデルと違う方向性を打ち出した千葉ロッテのビジネスモデルは、いったい何を手本としたのでしょうか?

 

ちょっとでもそういう問題意識を持ってスポーツ新聞を眺めていれば、すぐに「千葉ロッテの記事の見出しは、Jリーグの記事の見出しと同じだな」ということに気がつきます。

 

Jリーグの記事の見出しも、「ジェフ千葉がなんとか」とか「ガンバ大阪がどうとか」とチーム名で出ています。スポーツ新聞の見出しを通じて、千葉ロッテのビジネスモデルがJリーグを意識して構築されたものであることが見えてくるのです。

 

プロ野球の仕事をすることがなくても、チームスポーツやチームを売り出す仕事をする場合に、プロ野球型でいくのか、サッカー型でいくのかの方針を出す場合にも、この考え方は使えます。また、社内の自分の所属する部署がどっちのタイプなのかで自分の動き方も変えられるので、この考え方を覚えておくのは意外と使えるなぁと思っています。

 

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