中国外交の考え方のベースにある台湾と「一つの中国」原則
6月13日に東京財団の第二回「政治外交検証」公開研究会 「中国外交における原則と実利主義」に参加しました。
レクチャーに参加した理由は、国内だけでなく、海外での事業開発を数多く手がけてきていることから、”外交”の基本的な知識を身に付けておく必要があるためです。
私は、香港返還後から、中国での事業開発に携わってきました。うまくいったものもありますが、うまくいかなかったものも数多くあります。
事業開発の成功率が5%と言われている中で、政治的な要素(と思い込んでいるだけかもしれませんが)で、中国での事業開発成功率はもっと低いと実感しています。
しかし、同じようなリスクが、事業開発をやってきた他の国にもあります。「なぜ中国のリスクをもっときちんと定義できないのか?」と、悩んできました。
中国政府がどのように外交を考えているのか、歴史的背景を踏まえて理解するのが一番の近道なのですが、今まで、いろいろな方にお話を聞いても、今一つ、中国の外交戦略が理解できませんでした。
その理由は、客観的事実をベースにした仮説ではなく、現象を小さな点で捉えていたからだと思います。
そして、分からないから詳しそうな人に聞くという形で、ロシアの時のように、自分で原著の論文等をあたって勉強をしてこなかった私の怠慢さでもあります。ここ最近は、成功率をあげられないから、中国ビジネスを避ける方向でした。
今回、法政大学法学部の福田円先生のレクチャーを聞いて、そして、ご著書を読んで、客観的事実に基づいて、中国及び台湾という面で捉え、しかも、それに対してアメリカをはじめとする大国がどうリアクションしているのかについても解説いただき、非常に納得がいきました。
以下、レクチャーの簡単なメモです。
中国・台湾関係をみると、中国外交の本質が見えるのではないか?
- 台湾海峡危機以降、政治的利用となってきている
- 当時の台湾の政権の交代に伴って、主張が変わってきている
- 「二つの中国」への反対 →「一つの中国」
- 宣伝外交による「一つの中国」
- 現実主義(プラグマティズム)
台湾解放よりも国家安全保障を優先(持っている場所を守る)、スローガンを国家建設や愛国主義に利用、中国としての国際的地位を獲得
→原則も”現実”によって変わり、変化する余地を担保した政策となっている「一つの中国」原則の3つの要素
- ナショナリズム― Nationの統一、発展、膨張の中で、領土保全という考え方
- 原則と実利主義の柔軟性―尖閣諸島も日米同盟があるために軍事的に占領は難しい。民主党政権の時に、軍事費削減や日米同盟の関係悪化をみて、アメリカ国内の世論を変えるために、尖閣諸島問題を再燃させたと考える方が妥当。
事実、この1-2年で尖閣危機を作り出したことで、アメリカ国内では「ただの岩を巡ってアメリカがそこまで軍事費をかけて守る必要はない」という世論になってきている。- 中国の軍事力増強と米中同盟強化―アメリカと日本の関係を弱め、自分たちが強くなっていくことで、今後の情勢を有利にしていく
→今後の懸念点になる
詳細は、福田先生の第25回アジア・太平洋賞を受賞された「中国外交と台湾―「一つの中国」原則の起源」に書かれています。
この本は、6800円+税と、非常に高価な本です。しかし、何かのセミナーに行っても、5000円、1万円とお札が飛んでいき、中身が無かったりすることもあります。それと比較すると、内容がすごく濃いので、ROIは高いと思いました。
やはり、分からなないと言って勉強をするのをやめるのではなく、あれこれ手を出してみて、自分で納得のいくものを探す努力も必要だと感じました。
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