ひとりの時間

Photo数年前、私はボロボロで、ひとりになることをあえて選択していた時期があります。それからだいぶ立ち直ったかなぁと思っていたのですが、ここ最近、ひとりで何かをすることが多い。意識的にしてるわけではないけれど、ひとりでお寿司やさんに行ったり、みんなでスキーに行くはずだったのを一抜けしたり、週末の予定をすべてキャンセルして自宅にこもって大量の本を読んだり。ちょっとヒッキーになってるのかな...と思っていたので、手に取った、華恵さんの「ひとりの時間」。
「「ひとり」で何かをする、というのは、ダメですか。いつも「みんな」と行動していないと、ダメですか。」
この本は、ひとりの時間のかけがえのなさを伝えています。
「みんなと同じでいることにがんばり過ぎていると、自分の中の好きなことに気づかなくなる」など、そうそう、そうだよね、と頷くメッセージがたくさんあります。わずか16歳でこの本を書いてしまうとは、この人はすごいと心から思ってしまうと同時に、どれだけ辛い思いをして生きてきたんだろう?と、その人となりを想像してしまう作家、華恵さん。
私は数年前に突然パートナーをなくすまで、ひとり行動ができない人でした。ひとりでレストランで食事をすることすらできなかったし、ひとりでいることにどちらかというと恐怖感を持っていました。ひとり暮らしの経験もほとんどありませんでした。
けれど、パートナーをなくし、一緒にやっていた事業の売却に伴い、ドラマのようなトラブルに巻き込まれました。自宅に何度も盗聴器がしかけられ、ケータイの番号を変えても変えてもしつこくかかってくる脅しの電話。24時間気の休まるヒマがありませんでした。
突然の出来事に壊れそうになる心を抱えて、社員の生活の確保とお客様へのご迷惑にならないように事業の継続に必死でした。泣くこともできないまま数ヶ月が過ぎ、しかし物事には必ず終わりがくるのだと信じていたように、問題は片付き、自分の手を離れていきました。
あまりに多くのことがありすぎて、そして、人が人を一番傷つけるのだと分かり、ひとりになりたかった。生きてることが辛すぎて、すべての記憶を失いたいとまで思いました。
#両親は私が外向きの責任を果たしたときに自殺すると思っていたようで、自宅内の刃物がすべて隠されたり、毎日チェックが入って、心配する気持ちは分かるけれど、生活するのに困りました。
最初は仕事と歌のレッスン以外は家にこもりっきりだったけれど、このままでは自分は本当にダメになると、パートナーと一緒に行こうと言っていた場所をひとりで旅するところから、「私のルネッサンス」がはじまったと思います。余談ですが、こんな時でも私はやっぱり歌いたいのだと、大げさだけれど、歌があるから生きていけるのだと実感したのもこの頃です。
以前、ブログに書きましたが、新婚旅行で行きたいと言っていたバルト海での豪華客船クルージングにひとりで行き、その帰りのストックホルムの空港で、セシリア・アーハンの「PS I Love You」を読み号泣しました。はじめてきちんと泣くことができたのです。なんでストックホルムなのか分からないけれど、人にどう思われようと気にならないくらい、とにかく泣いて泣いて泣きまくりました。そのときに通りすがりのスウェーデン人のおばさんに抱きしめられて、人が人を傷つけるけれど、人によっても癒されるのだと身にしみました。
それからひとりの時間が怖くなくなったように思います。人間は自分が思っているよりもとても強いものだと分ったし、ひとりで自分を見つめる時間があったからこそ、自分が何を大事にしたいのか、人との関係についても気づくものが多かったのではないかと思います。
そんな時期を通り過ぎて、いつの間にかひとりでいることにも、人と一緒にいることも、両方とも楽しめるようになりました。
今回この本を読んで、この数年の自分を振り返り、あのときと今の「ひとりになりたい」は違うんだなとはっきりと分かりました。
自分がやっていることに自信がなくなるとき、同じような考え方をしている人にふれあうと、自分を肯定される気がします。
今のままの自分でいいのだよ...と。
(総合評価:★★★★☆ 私も自分の伝えたいメッセージをきちんと伝えられる作家/アーティストになりたい)

関連記事

コメント

    • 齊藤明則
    • 2008年 1月 16日

    貴著でも読ませていただいていますが、ものすごい高い壁を乗り越えて今の秋山さんがあるのですね。
    私の前の壁など大したことないな、と思うと同時に、「そんな壁頑張って乗り越えろ!」と励まされた気がします。
    尚、我家では小学生の男の子二人がいつも楽しそうに遊んでますので、一人になる時間はほとんど取れません・・・・。

    • TM-K
    • 2008年 1月 17日

    秋山さんの優しさは、こんな風に育まれているんだと改めて思いました。この本、買って読んでみますね。
    約一年前に色々と思い悩んでいた時、夫から「君はひとりで居る事に慣れなくちゃ駄目だよ、人間はいつも一人なんだから」と言われた事を思い出します。
    秋山さんのような精神的な強さを私も身に付けなくちゃいけませんね。

  1. 齊藤明則さん、
    世の中もっとすごいことを乗り越えてる人がたくさんいるので、そういう人たちのお話を聞くと、自分の通り過ぎていることなんてたいしたことないって思えますよね!
    にぎやかなのも悪くないですよ〜 トイレで1人の時間を楽しんでください :)
    TM-Kさん、
    ひとりでいることに慣れるのも大事だけれど、人と一緒にいることも大事。
    バランスだと思いますね〜〜
    優しいという点では、TM-Kさんもいつもとても暖かい。私のめざす優しさです!!

    • まつーら
    • 2008年 1月 25日

    ・・・すごい。
    『唖然』とは、まさにことのことですね。
    スウェーデン人のくだりで、心打たれました。
    僕の好きな名言の一つ、
     「絶望したことがなければ
      本当に大事なことはわからない」
    が、まさにピッタリ。
    これからも頑張ってください。

  2. まつーらさん、
    >「絶望したことがなければ本当に大事なことはわからない」
    名言ですね!
    生きていればいいことも辛いこともあるけれど、それが人生の醍醐味なのかもしれませんね。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


アーカイブ

ページ上部へ戻る