赤い薔薇ソースの伝説
これよかったよ、と、母が遊びにきたときに持ってきた「赤い薔薇ソースの伝説」を読む。この本は、メキシコを代表する脚本家ラウラ・エスキヴェルの小説デビュー作で、この作品はメキシコで大ベストセラーになったそう。
#我が家は家族中で本を回し読みします。会うたびに、最低数冊、多いときは10冊近い本をまわします。自分がカバーしていないジャンルの本をカバーしているので、分野が偏らないし、世代が異なるので、違う視点で本の感想が聞けてなかなかいいです。
原作のタイトルは、Como agua para chocolate(ココアのためのホットウォーターのように)なのに、なぜ日本語タイトルが「赤い薔薇ソースの伝説」なんだ!?と、謎に思うも、読み進めていくと、出所が分かります。
自分の気持ちが料理を通して伝わってしまう不思議な力をもった少女の恋と人生を綴ったお話ですが、「風と共に去りぬ」にかなり影響を受けた本だなぁ〜と思います。
末の娘は生涯母親の面倒をみるというしきたりから、愛する人と結ばれず、愛する人は、自分の姉と結婚してしまう(それは彼女のそばにいるためなのですが)。その愛する人に口にしてはいけない思いを料理に託す。彼からもらった薔薇の花びらを使って、主人公は料理を作る。そのシーンからこのタイトルになったのでしょう。
面白いけれど、なぜこれだけメキシコでこの本が支持されたのか今ひとつ分からなかったのですが、あとがきに次のように書かれていて、納得。
この作品がメキシコで多くの読者をえたのは、どの国民、どの個人にもあることとはいえ、メキシコ人が普通以上に自己のアイデンティティーに関心があるからだと思う。スペイン人の征服によって消されてしまった文明と諸価値、植民地時代以降の階層分化と底辺層の貧しさ、そういう現実にたいして、メキシコ人は自己のアイデンティティー、人間の復権を求めて闘ってきた歴史がある。...
各章の標題となっているメキシコ料理は、知らないものもいろいろとあります。「チレ・エン・ノガーダ」っていったいなんだ!?とか、知らない料理を想像しながら小説を読むのは、意外と面白いです。また、レシピも載っているので、想像しやすい。
そして、そのメキシコ料理が、スペインとメキシコのそれぞれの伝統を受け継いでいる料理であることはいわずもがな。上記のような歴史的背景を考えながら、この本の中身を思い返してみると、料理というモチーフを本当にうまく使った小説だということが分かります。
この本、映画化もされているようで、今度見てみようと思いました。
作品紹介
革命下のメキシコ。家のしきたりのため恋人との仲をあきらめた末娘。不思議なことに、実姉と結婚したその彼のために心を込めて料理を作ると、食べた誰もが恋に落ちてしまう。風変わりで、情熱的で驚きに満ちた愛の寓話。メキシコ・アカデミー賞で10部門独占受賞。
この作品紹介を読んだだけでも、映画として見ても面白そうに思います。早速オーダー♩
コメント ( 2 )
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あ、これ映画でリアルタイム観ました。今確認したら1992年の映画なんですね。この映画観てからもう16年も経ってるのに、かなり印象に残ってます。
面白かった、料理が珍しくて興味深かった、映像が綺麗だった、という記憶ですね。
もう一度DVDで観たくなりました。
TM-Kさん、
さすがTM-Kさん、ご覧になってらっしゃったんですね!!
お料理がとっても珍しいですよね。この本に出てくるお料理のお教室があるとメールをいただきました。時間を見繕って、少なくとも、2、3回はお料理教室に出てみたいなと思っています!!