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絵: かたぎりもとこ

絵: かたぎりもとこ

発想力は、無から生み出す場合と、あるものから作り出す場合の2つの方法があると書きましたが、私が最も得意としているのは、違う分野同士の掛け算をすることで新しい企画を作り出していく方法です。私も発想法に関する書籍はたくさん読んだのですが、いろいろな方法を試していくうちに、自分の得意パターンはこれだっ! と思い、以来発想法で行き詰まったらとりあえずこの方法でがんばってみることにしています。みなさんも得意パターンを早く見つけられるように、いろいろと挑戦してみてくださいね。

 

さて、分野を掛け合わせて新しいものを作り出す方法を具体的にご紹介しましょう。実例でご紹介するのが一番わかりやすいと思うので、「2020年に実現可能で大ブレイクしそうな新技術を考えてください」という依頼を受けたときのことをお話ししましょう。2000年台初めごろに20年先の未来を考えてほしいという依頼でした。

 

まず私がはじめたのは、技術の中長期予測の本を読んだり、中長期の技術を研究している方々にインタビューをしたりすることでした。しかし、あれこれ読んでもいろいろなお話を伺っても、クライアントのビジネスにぴったり合う技術もなく、瞬間移動装置のようにどう考えても2020年に実用化される可能性のないものがたくさん出てきて、SF小説を書くわけじゃないんだから― という切羽詰まった状況になっていました。

 

締め切りも間近になり、誰もいなくなった明け方のオフィスで「この企画書どうやって作ろう?」と思案するものの、ちっともいいアイディアが浮かばない。「疲れた頭でもんもんとしてたって、まったく状況は変わらない!」と思ってしまうほど行き詰まっていた私は、思いきって仮眠をとることに。いつも会社で仮眠をしているときに借りている生物学科出身の同僚が持っていた細胞学の書籍(枕代わりに使うのにとてもいい厚さ)を本棚から取り出しました。普段は全く気にも留めないのですが、クライアントとは全然違う業界のこの本。もしかして……と思いその本をパラパラとめくって読んでいるうちに、「お―っ、ひらめいた! 生物と通信を組み合わせれば、おもしろい提案ができるかもしれない!」となったのでした。

 

生物と通信を組み合わせると思いついたら後は強制的にその組み合わせを検討するだけです。クライアントの通信関係の部署の名前を縦にリストア考フしていき、横は生物の機能をリストアップしていきました。そこにできたマス1つずつで何か新しいサービスが提供できないかと考えていくのです。

 

最初はなかなかいいアイディアが出てこず、うんうん悩んでいたのですが、メンテナンス×自律神経のマスに行きあたったときでした。ちょうどクライアントの中に、通信ネットワークの維持に莫大なコストがかかっている企業があり、メンテナンスや設定の変更などを、すべて手作業でおこなわなければいけないという問題を抱えていました。動物の自律神経のように、「自律神経システムを持った通信ネットワーク」が可能になれば、コンピュータがメンテナンスなどを自律的におこなうため、コストを大幅に削減できるじゃないか! と思いついたのです。

 

調べてみると、IBMのワトソン研究所が似ている分野で研究を始めたばかりであることがわかり、ここと組めば、有益な情報を得ることができます。さらに私は細胞学の研究者にアポイントをとって、動物の自律神経システムが通信ネットワークにどこまで応用が可能か、お話を伺いに行きました。

 

こうして「自律神経システムを持った通信ネットワーク」の実用化の可能性、および実現したときの市場規模を試算し、レポートとして提出したところ、クライアントに大受け。社内の誰も思いつかなかったようなものを出してくれて本当にありがとう、とクライアントの社長から感謝されたほどでした。

 

絵: かたぎりもとこ

絵: かたぎりもとこ

企画に煮詰まったときには、異なる分野と異なる分野を掛け合わせてみましょう。その中から新しい発想が開けてくることが少なくありません。

 

これを強制的におこなうのが、マッピング法です。縦軸に企画を出さなければいけない分野の構成要素を、横軸に全く違う分野を並べていきます。この横軸は、教科書的に、社会、理科、算数、国語……というものでもかまいませんし、先ほどの例のように生物の構成要素いというような区分でもかまいません。そこでできたひとつひとつのマスに対して何か新しいことを思いつかないかを書きこんでいくのです。

 

こうすると、強制的に異なる分野の掛け合わせをすることになるので、新しい発想がわきやすくなります。

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