春の雪
今日はオフを取っていたので、朝から映画を観に行きました。
前から観たかった「春の雪」。私の大好きな三島由紀夫氏原作の映画です。三島由紀夫の作品にとても強い思い入れがあるので、映画を観に行くのは止めた方がいいか悩みましたが、映像がとても綺麗だと聞いていたので、あまり期待をせずに観に行きました。
まず、前評どおり、映像がとても綺麗でした。昔、テレビで見た夏目漱石の虞美人草を思い出させる綺麗さで、妻夫木聡と竹内結子のコンビは映像的にとても良かったと思います。
原作では、前半の清顕の子供っぽい屈折したところと、後半の内面に秘めていた熱いところがはっきりと表現されていたと思うのですが、この映画では、何時から清顕が変化していくのか、その変化がとても曖昧で、どちらかというと、原作のストーリーを追う感じが否めませんでした。
春の海は、豊饒の海の第一巻にあたる物語ですが、豊饒の海のテーマである輪廻転生の部分がほとんど描かれておらず、とても残念に思います。
豊饒の海は、4部作になっていて、清顕が、勲、月光姫、透といった全く別の人物に生まれ変わっていきます。春の雪に描かれていたように、聡子との愛に死んでいった清顕と、憂国の思いからクーデターを計画しそして自ら命を絶った勲と、麗しいタイのお姫様ジン・ジャン(月光姫)と、悪の権化のような美少年 透。彼らは「一つの魂」を生きており、春の雪でも親友役をしていた本多が、その「一つの魂」を一生にわたって追っていきます。年を重ね、老い、老醜をさらしながらも、その清顕の輪廻転生を見届けようとします。この輪廻転生を主題として三島由紀夫氏が選び、そして、遺作とした意味は、できれば表現してもらいたかったなぁと残念でたまりません。
総合評価:★★★★☆
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